経営層から「AIを使いたい」「クラウドで効率化したい」と言われる場面が、中小企業でも当たり前になりました。一方で、現場から返ってくるのは「導入できる人がいない」という声です。表層のサービスがいくら進化しても、ネットワークと基盤を設計し、運用に落とし込む仕事は残ります。クラウドやAIの話が進むほど、インフラエンジニアの重要性は見えにくい場所で増しています。

「AIで業務を効率化したい」「全社をクラウドに寄せたい」──そういった経営判断は、もはや大企業だけのものではありません。中小企業のIT担当者にも、近い宿題が降りてきています。ところが、SaaSを契約するだけで終わる話はほとんどなく、ネットワーク・認証・運用設計・データ保管といった基盤を誰が設計し、誰が運用するのか、という問題に行き着きます。担い手であるインフラエンジニア、なかでもネットワークを担う人材の位置づけが、これからどう変わるのかを順に見ていきます。

数字で見る、インフラ人材の需給ギャップ

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、国内のIT人材は2030年までに最大約79万人不足すると推計されています。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2024」では、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と回答した企業の割合が62.1%と、調査開始以降初めて過半数を超えました。とりわけクラウド・データ分析・セキュリティといった基盤に近い領域での不足感が強まっています。

国内のインフラ周辺の需要動向(2024〜2028)
・IT人材不足:2030年時点で最大約79万人(経済産業省)
・DX人材が「大幅に不足」と回答した企業:62.1%(IPA「DX動向2024」)
・国内データセンター新設・増設投資:2028年に年間1兆円規模(IDC Japan)
・国産AI開発:政府が2026年度から5年間で約1兆円投入を表明 出典:経産省「IT人材需給に関する調査」、IPA「DX動向2024」、IDC Japan、経産省デジタルインフラ整備有識者会合

視点 1:クラウドは「使う」と「作る」が別物

クラウドサービスをカタログから選んで契約するのは、業務部門でも可能になりました。しかし、企業として本格的に運用するとなれば、ネットワーク経路、認証基盤、ログ集約、コスト統制、障害時の切り戻し設計のいずれもがインフラエンジニアの領分です。マルチクラウドやハイブリッド構成では「どのワークロードをどこに置くか」をビジネス要件と擦り合わせる設計力が問われます。

中小企業でも、部門ごとのSaaS導入が積み重なった結果、認証・ログ・経路がバラバラになる例が増えています。クラウドが普及するほど、それらをつなぐネットワーク設計の重要度はむしろ上がります。

視点 2:AI・クラウドの裏側は、結局「ネットワーク」が支える

クラウドサービスや生成AIは、利用者からはブラウザの中で完結します。しかし裏側では、拠点・データセンター・クラウドをつなぐネットワークが常時データを運び続けています。次のようなネットワーク設計の論点は、規模を問わず避けて通れません。

  • 拠点〜クラウド・データセンター間の接続:インターネットVPN、IP-VPN、専用線の使い分け
  • 機密データの経路:閉域接続、暗号化、ゼロトラスト型の境界設計
  • 業務時間帯のトラフィック予測と回線・拠点機器の容量設計
  • 回線・経路の二重化と自動フェイルオーバー

通信キャリアや大規模エンタープライズで蓄積されてきたWAN設計・IP-VPN・ゼロトラスト型ネットワークの知見は、クラウドやAIを使い始めた中小企業の現場にも降りてきています。経産省のデジタルインフラ会合でも通信網と電力の同時最適化が議題になっており、ネットワーク視点を欠いた基盤戦略は成立しにくくなっています。

クラウド・AIを下支えする3つの層 表層 SaaS / 業務アプリ / AIモデル / 生成AIサービス 設計層 ネットワーク / 認証基盤 / ログ集約 / 運用設計 / セキュリティ 物理層 データセンター / 通信網・回線 / ネットワーク機器 / 電力・冷却 インフラエンジニア の領分 表層のサービスがいくら進化しても、下2層を組まなければ動かない
図1:クラウドサービスもAIモデルも、設計層と物理層の上に乗って初めて業務で動く。この下2層を担うのがインフラエンジニア。

視点 3:中小企業もハイブリッド構成を避けて通れない

ハイブリッド構成は大企業だけの議論ではなくなっています。業務システムはSaaS、機密性の高い顧客データはオンプレや国内データセンター、AI処理は閉域構成のローカルLLMといった分担が中小企業にも降りてきています。各層をつなぐネットワーク・認証・運用設計は、コストや規制対応とも直結するため、経営判断と切り離せません。

社内に専任のインフラエンジニアを置きにくい中小企業ほど、設計から運用まで伴走できる外部パートナーをどう確保するかが課題になります。

人材ではなく、体制としてインフラを見る

クラウドやAIを使う会社が増えるほど、それを下支えするネットワークと基盤の設計・運用を担える人材は希少になります。社内で一人を採用できるかどうかだけでなく、設計、構築、監視、障害対応までをどの体制で持つかが、経営判断の一部になっていきます。

フォースネット株式会社は、通信キャリア網や大規模エンタープライズのネットワーク構築・運用に携わってきた経験を背景に、中小企業から官公庁まで、ネットワーク・通信・AI基盤を一体で扱う設計と運用を支援しています。

参考資料

インフラ・基盤構築の要件整理

ネットワーク設計、クラウド・オンプレのハイブリッド構成、AI基盤の構築・運用を、要件整理から運用設計まで段階的に確認できます。

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